前回は「経営理念とは何か」と「経営理念のつくり方」についてお話をしました。今回は「経営理念の浸透」について、当社の取り組みをもとにお話をいたします。

経営理念を社内に浸透させたいと一番思っている人は社長だと思います。社長直轄のプロジェクトとして、経営理念を額縁に入れエントランスに掲げ、ポスターをつくり社内に貼りまくり、冊子をつくってスタッフに配り、朝礼でみんなで唱和をする、というのがよくある光景ですが、これで経営理念がスタッフに浸透するかというと、なかなか難しいのが現実です。悲しい……

そこで私が思ったことは、「今いるスタッフに経営理念を浸透させるよりも、この経営理念のもとで働きたいという人を採用したほうが早いのでは」ということです。

当社の場合は、これまで、事業や職種に興味を持ち入社した人が割合として多かったです。そういう人は、経営理念より仕事内容にロイヤリティを持っていて、経営理念がどうであろうと、自分のやりたい仕事ができればそれでいいという考え方をします。

それはそれで、プロフェッショナルとして顧客からの評価も高く、業績に貢献してくれればいいのですが、やっぱり仲間として一緒に働くのなら、同じ経営理念のもとで仕事をしたいですよね。

そういうこともあり、採用面接では、事業や仕事内容とともに経営理念についても多くのことを対話するように変えました。そして、当社の経営理念にワクワクしてくれている人を採用するようにしています。とはいえ、これまで多くの“経営理念共感詐欺”にあってきてもいるので、ただ単に経営理念に共感していると言うだけの人を採用しないよう注意をしています。

さて、経営理念に共感している人が次々に入社してくると、既存のスタッフに良い影響を及ぼします。経営理念に無関心だった社内が、経営理念に関心・共感のない人が少数派となり、否応なしに関心を持たざる得なくなります。関心・共感の濃度とでも言いましょうか、当社は今、80%ぐらいなので、これを99%となることを目指しています。

経営理念への共感の輪が広がったら、「勉強会」を通じて浸透を図っていきます。自社の経営理念を単なる言葉ではなく“意味”として理解すれば、共感がさらに深まっていきます。

勉強会は、全社ガイダンスを行った後に、各部署で行い議論を深め、そして全社で行いまとめる、という進め方がスタッフに当事者意識を持ってもらう上ではよいと思います。その中で社長は全社ガイダンスで講師として出席するに留め、あとは経営企画室、社長室に運営を任せます。勉強会の講師やファシリテーターとして外部のコンサルタントを招くのも、客観的に経営理念を考えることができるのでお勧めです。

次に、経営理念が浸透している会社や仕事の雰囲気をオウンドメディアを活用して社外へ発信していきます。そうすることで、さらに経営理念に興味・関心を持った人が採用応募してくれるという好循環が生まれてきます。

以上が当社の経営理念の浸透への取り組みです。このことにより会社の雰囲気が良くなり、業績も上向いていることから、経営理念の重要性を実感しています。

クロスメディアグループ 代表 小早川幸一郎

 

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