今回は川辺が担当します。本を企画した背景や思い、ふだんは考えないことを言語化するということで、あまり自信はないのですが、少しでも皆様の心に残る一言が紡ぎ出せたら――そんな思いを感じながら書いてみます。

下心まる出しで制作した『ミニマリスト生活』をきっかけに、ライフスタイルの沼にはまる日々

ライフスタイル書籍をつくるきっかけとなったのは2019年の夏ごろ。この時は商業出版の企画をクロスメディアで仕込み始めた時だったのですが、丸善オアゾでミニマリストしぶさんの『手ぶらで生きる。』(サンクチュアリ出版)を発見して、「こんな本をつくってみたいなぁ」と心が躍りました。

そもそも私のキャリアで、ビジネス書をヒットさせた経験はほぼなく、エンタメよりか実用書よりの本の実績しかありません。だから「ビジネス書でベストセラー」と言われると、正直モチベーションは持てず、私自身の能力を発揮できないと感じていました。

そういう意味で『手ぶらで生きる。』は、ジャンルを超えて時代に通底している空気を私に伝えてくれた本であり、「モノを持たない」生活がビジネス書ジャンルまで浸透していることを教えてくれました。今回企画した『クリエイティブ整理・収納術』も『ミニマリスト生活』から続く一連の流れのなかでの作品です。

ちなみに『ミニマリスト生活』をつくった動機は大変不純なもので、ビジネス書コーナーで売れる「おいしい領域を見つけた!」です。ですから、この時はライフスタイル系の書籍編集を手掛けたかったからではなく、「書籍で儲けられるジャンルを見つけたなぁ」という、やましい気持ちのほうが9割でした。

私自身、この2年間、基本的に一貫して「新しいライフスタイルの提案」という切り口を継続してきました。そのことは『ミニマリスト生活』という偶然のヒット作に恵まれたということと、この分野が社会の地殻変動を敏感に察知していると思えたからです。

その根拠としては、YouTubeの動画再生数、登録者数ともに上位安定しているということが挙げられます。また、細分化されたニッチ領域のテーマにおいても、安定した動画再生数になっています。

このことから、話をおおざっぱに要約すると、「人々は働くことよりも、生き方や暮らし方にこだわっている」と読み取れます。

ライフスタイルは主婦の領域ではない。だから、ジェンダーレスな整理・収納本を世に問いたい

企画する時に、私は必ず書店訪問します。主に都心部と郊外をつなぐ大型店を中心に回り、ふだんはあまり行かないお店を含めて、だいたい1日に5店舗程度調査するようにします。

「営業は足で稼ぐ」という言葉がありますが、「企画は足で稼ぐ」というふうに私自身は置き換えて、頭でっかちな企画からの脱却を図っています。そんななかで、『28文字の片づけ』という本が目に留まり、直近のデータを見ても、かなり売れていました。ということは、「新しい片づけ本」はまだ可能性があるのではないか? と考えたのです。

YouTubeを調べてみると、「断捨離」は圧倒的に人気があります。でも、今さら断捨離本はつくりたくありません。さらに調べると、「100均DIY」の動画にあたりました。再生数も100万超え!「これだ!」と感じたのが著者のTSUNさんでした。

仕入れ会議に提出した企画書は「100均DIYで仕事と生活を整理する方法」でした。この企画で著者にぶつけましたが、「100均DIY」をタイトルに入れると、「100均マニア」にしか反応されなくなり、なおかつ、その人たちは「お金がない」と言われました。

そこでタイトルに関する著者との議論が3カ月ほど続き、最終的に決定したタイトルが『クリエイティブ整理・収納術』でした。

なんとも特徴がないタイトルだ、と思われた方もいるかもしれません。でも、かなりの調査期間を経て決定したタイトルですので、編集者としてはこのタイトルがベストだと思っています。

タイトルの狙いとしては、女性読者が多いライフスタイルの棚で、「どう他の本と差別化するのか?」ということがテーマでした。私自身が著者にぶつけたのは「ワーク・ライフ・ハーモニーが求められるなかで、主婦ではなく主夫も共感する片づけ本」でした。

「整理・収納」というジャンルは主婦たちの特権領域ではありません。「主夫」だって求めている――これが私自身の仮説であり、今っぽい本の提示かと。「クリエイティブ」というワードは、主に広告やデザインなどに使われる言葉です。なぜこの言葉にこだわって使用したのか? と言いますと、弊社刊『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』がスマッシュヒットしていることが頭にあったからです。

時代は変わり、多くの人々が「クリエイティブ」を求めているように思えます。だったら、片づけ分野で今まで使われなかったワードを組み合わせてみるのは面白いのではないか? という発想がありました。今は家を守るのは主婦ではなく主夫も含まれます。家事や育児も主婦だけではなく、主夫の役割でもあります。

だからこそ、主夫でも読める「整理・収納」の本が欲しいと思いましたし、そういった視点がある本が求められているとも思います。

という風に語ってきた自分の部屋を見まわしてみると、お世辞にもクリエイティブには整理・収納できていませんが、そのことはツッコまないようにしてください。

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