進化する「編集」

田中:小早川さんの定義によると、編集というのはコンテンツ づくりだけでなく、人や企業、あるいは事業、さらには社会の要素 をうまく整えたり、何か新しいものを作ったり。そういうことに関わ るのが、編集のお仕事っていうことになるわけですね。

小早川:そうですね。漢字でいうと集めて編むって書くじゃないですか。企画とかアイデアのように0から1を生むのではなく、既にあるものを組み合わせて、何か新しいものを作るって感じですね。

最近ですとデザインという言葉が世界的なトレンドになっていますよね。スティーブジョブズのiPhoneや、佐藤可士和さんがユニクロをプロデュースして、「デザイン」が一般化しました。デザインと編集はよく似ていて、ほぼ一緒なんじゃないかなと思っています。デザインっていうのは他人の思考をビジュアル化すること、編集は他人の思考を言語化することなので、アウトプットの表現が違うだけで、本質的なところは一緒なんじゃないかなと思っています。うちの会社はそういう編集力をデザインのように一般化していきたいし、そうすることで世の中の役に立ちたいと思っています。

田中:編集というと、紙と鉛筆に囲まれて作家が書いた原稿に手を入れて、それを印刷屋に、というような仕事しか昔は想像できなかったんですが、お話をお聞きすると編集というのはもっとポジティブにとらえられますね。社会にも貢献し、積極的な意味を持った言葉だなと思いましたね。

ふと思い出したのが、イノベーションという言葉です。もう20年ぐらい前にコロンビア大学へ客員研究員で行っていまして、商品開発担当のインド人の先生が言ってたのです が「イノベーションというのは、インヴェンション(創意・工夫)を顧客の方に向けて束ねることだ」と言ってたんです。イノベーション というのは発明ですよね。それを顧客の方に向ける、つまりインヴェンションを顧客に束ねて「こうやって束ねると、使いやすくなりますよ」と示すのがイノベーションだっていうふうに言ってたんです。小早川さんのおっしゃった編集って実はそういう意味で言うとイノベーションを実現することなんじゃないかなと思いましたね。

小早川:イノベーションはシュンペーターで言う「新結合」ですよね。あるものとあるものを組み合わせて新しくする。これってまさに編集だなって思います。経験が蓄積され、データになるから、それを組み合わせて新しいものをつくる選択肢が増える感じなんですよね。

だから編集はフレッシュなアイデアが出せる若い人が良いアイデアを出せるというわけではないんです。若い人が太刀打ちできないような、アウトプットを生み出している経験豊富な編集者は実際たくさんいますね。「新結合」ができやすいのは職業経験を積み重ねて、ある程度知識が溜まっていかないと、なかなかできないんじゃないかなと思うんです。だからそういう結合ができるまでインプットを増やしていくっていうのは必要なんじゃないかなって思いますよね。

iPhoneもディズニーランドも「編集力」から生まれた

田中:先ほど小早川さんもおっしゃっていましたが、iPhoneというものも編集によって生まれたという見解もできます。津田健二さんという技術ジャーナリストの人が2011年に言ってたことですが、iPhoneというのは技術的には別に極めたものじゃなく、いろいろなものの寄せ集め。それがまさにお客にとっては非常に便利で創造的で楽しいものであるということですから、これはiPhoneという独自のイノベーションだったと思うんですね。

だからそういう意味で言うと、スティーブジョブズはITの編集者であり、小早川さんがおっしゃったようにiPhoneを出すことによってまさに社会をも編集したということになるんじゃないかなと思いました。

小早川:もうひとつの例でいうと、ウォルトディズニーも編集者の先駆けですよね。アニメーションからディズニーランドまで、社会的な事業を創造しているわけですから、編集者だと思うんです。

田中:そうですね。「ディズニーレシピ」というものがあるのですが、ウォルトディズニーは料理のように「メディアをどうやって組み合わせてあって、ディズニーの世界を作るか」ということを考えていたんです。ディズニーランドというテーマパークを真ん中に置いてその周りに出版、音楽、アニメーション、そういういろんなメディアを配置する。彼は非常に早い時期から、メディアをクロスさせてどういう世界を作っていくかという、まさに「クロスメディア」の構想をもっていたんです。そう言った意味でウォルトディズニーは小早川さんがおっしゃる通り、編集者ですね。

 

 

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