1月30日、私が編集担当した新刊『世界史の食べ歩き方』が発売になった。
広報室から依頼があり、本書ができるまでの話を少し振り返ってみたい。

『世界の一流は「休日」に何をしているのか』への仮説から

2025年のクロスメディアでもっとも売れた『世界の一流は「休日」に何をしているのか』――この本はわたしにとって大きな衝撃だった。

 

画像

なぜなら、ある意味、ビジネス書を否定している本だったから。ビジネス書であって、ビジネス書ではないものが評価され、それが受け入れられる時代に突入したということを示唆している、と思ったからだ。

未来のある時点において、この2025年はビジネス書にとってのメルクマール(節目)となるたろう。『世界の一流は「休日」に何をしているのか』は、時代の大きなうねりとして記憶されるビジネス書史の重要な作品であるから。

旧来のビジネス書は終わり、新しいビジネス書の時代が始まる。

2010年代まで、ビジネス書の大きな変化はなく、かつてほど売れなくなったもの、相変わらず「入門書」「わかりやすさ」がたっとばれてきた。

しかし、2020年代のコロナを経て、2026年に突入したいま、そんな安直な企画は目向きもされず、人気作家の作品ですらセールスが厳しくなった。

では、今後、どのような作品がビジネス書で支持されるのか? この無理難題に応えられない出版社は、あっという間に淘汰されるだろう。

わたしは大きな危機感をもって根底からビジネス書の定義を書き換えることを強いられることになった。

ふと目にした中朝国境、断橋の衝撃

いつものようにYouTubeを観ていた。そしてビジネス書を書ける著者を探しているうちに、旅系YouTuberの動画を多くザッピングするようになっていた。そして、どのチャンネルも面白く、多彩な才能が溢れていた。

なぜ「旅系YouTuber」は元気なのか? そんなことを考えていた時、ひとつの回答にたどり着いた。

「コロナが終わった、ということか……人はみな旅をしたい気分なのかもしれない」

その証拠に2025年の訪日外国人客数(インバウンド)は、前年比15.8%増の約4268万人となり、過去最高を記録、初めて4000万人を突破している。一方で2025年の日本人出国者数(アウトバウンド)は、1473万人と2024年(約1300万人)から13.3%増加し、緩やかに回復。

日本人も、世界の潮流と同期して、「旅に出たい」という機運は高まっているようだ。

わたし自身も、20年ぶりくらいに「旅に出たい」気分になっていた。いつものようにYouTubeをザッピングしていると、「SU Channel」に遭遇した。

「中朝国境、断橋」の動画は驚異の500万再生! 「中朝国境」に何の興味ももっていなかったわたしは不思議に思い、その動画を観てみた。

 

画像
(撮影:陶山健人氏)

「断橋」という名前のとおり、橋が途中でなくなっている。なので、橋としては機能していない。その光景を見ると、歴史の謎に思いを馳せることができる。もう一本平行して橋がかかっているが、これは中朝をつなぐ鉄道橋である。

わたしはこの光景に釘付けになってしまい、この動画がなぜ多くの視聴者に支持されているのか? ということに興味をもち、そして、この動画を撮った「SU」とは何者なのかに興味をもった。

「世界史の食べ歩き方」はビジネス書ではないが、ワーク・ライフのライフを充実させるための提案。だからビジネス書である、と言い張る作品

わたしはふと、「休日」に何をするのだろう? と考えた。「旅でしょ!」(「今でしょ!」みたいな感覚で)と口にしてしまっていた。

そう、ビジネスパーソンがいま最も興味をもっているのは「旅」ではないか? そういう妄想に憑りつかれてしまっていた。そこから、ワーク・ライフを充実させる駆動は「旅」にあると定義。半ば強引だが、ビジネス書として「旅」がテーマの作品があってもいいのでは? と考えるようになっていた。

しかし、ふつうに企画したら、会社としては???という判断になる。「SU Channel」を観てから3カ月間が過ぎたある日、ふと企画の着想が頭の中に浮かんだ。

「世界史とグルメ」をテーマにしたら、どうだろうか?「世界史」というキーワードを埋め込めば、ギリギリ会社承認を得られるのではないか? そう考えた。なぜなら、ビジネス書版元の多くが「世界史」というテーマで本を刊行していたので。

「世界史の食べ歩き方」というタイトルで企画書をつくった。空気を読まず、自信満々でプレゼンした。よーく考えてみると、こんな企画をよく通してくれたなぁと思った。だって、全くビジネス書とは関係ない。ありがとうございます! わたしはツイてます。寛容な出版社で働けてラッキーです。

ここでいう「世界史」とはいまの世界で起こっている現代史であり、その現場で「食べ歩く」という全く別のフォーカスを入れることで、世界のいまを切り取りたい。編集者と著者は、そのような思いでまとめていますので、ぜひご一読を!

(クロスメディア・パブリッシング編集長 川辺秀美)

▼【採用情報】クロスメディア・パブリッシングでは、編集者を募集中です。気になる方はぜひこちらの記事をご参考ください。
https://note.com/crossmedian/n/n84c59f141ac2