デザイン室の城です。

今回は広報室から、「『君は体験に投資してるか?』の表紙ができるまでの話をしてほしい」と声をかけてもらいました。

担当デザイナーとして、この一冊が形になるまでの試行錯誤を少しだけお話しさせていただきます。

 

イラストベースから始まった珍しい本づくり


私は本を中心にパンフレットやWEBサイトなど、いろんなデザインをしています。本だけでも月に4〜5冊、年間で数えると50冊以上の表紙を手がけている計算になります。

今回の『君は体験に投資してるか?』は、社長の小早川さんの担当書籍でした。

この本の作り方は少し珍しくて、最初から抽象的なイラストをベースにするということが決まっており、そこから広げていくスタイルでした。


小早川さんからのリクエストは、「いわゆる『THE・ビジネス書』とはちょっと違う、あまり見かけないデザインにしたい」というものでした。

その言葉を受けて、私はタイトルのフォントにも、ひと工夫こらすことにしました。

明朝体にしようか、ゴシック体にしようか……と悩みました。結局、文字の端を少し伸ばしてみたり、あえて切ってみたりしながら、どこか「ひっかかり」のある、オリジナルの文字を作ってみました。

できあがったのは、あえて今の流行りとは逆を行くような、レトロでどこか愛らしいデザイン。本屋さんで見かけたときに目が止まるような、心地よい違和感を目指しました。

 

さらに、カバーと帯で紙の種類を変えています。手に取ったときの手触りも楽しんでもらいたいと思いました。

あえてたくさんのパターンを提案する理由


今回の制作で一番力を入れたのは、デザインのパターン出しです。イラストの色を何度も変えたり、配置をあちこち動かしたり……。気づけば、数えきれないほどの案を作っていました。





ふだんの仕事でも、「こんな感じで」と頼まれたとき、たった一つに絞って案を出すことはありません。ちょっと崩したB案や、ガラッと雰囲気を変えたC案、D案。そんなふうに、たくさんの選択肢を並べるようにしています。

 

そんなに作る必要があるのかと思われるかもしれません。

もちろん「たくさん作ってもらえた」と喜んでほしい気持ちもありますが、一番は「これだ!」と選ぶときのワクワク感や、納得するプロセスを一緒に楽しんでほしいからです。

 

一見すると遠回りに見えるかもしれませんが、あえて色んな道を見せること。それが結局は、お互いが一番気持ちよくゴールへたどり着ける近道なんじゃないかな、と思っています。

 

デザイナーとしての「エゴ」は手放す

仕事をする上で、自分のエゴは一番後回しにしています。まずは編集者さんや著者さんの頭の中にあるイメージをしっかり受け取ること。その「枠」の中で、いかに自分らしい遊び心を添えられるかを大切にしています。

 

今回のプロジェクトは制約が多かったので、大変な場面もありました。

けれど、自分一人の頭では出てこないようなオーダーだったからこそ、いつもの得意パターンに頼らない、新しいデザインに出会うことができました。

 

決められたルールの中で試行錯誤するのは、不自由なようでいて、実はとても冒険的で楽しい時間でした。良い「体験」をさせていただいたことに感謝です。