今回は『おとな六法』を編集した川辺が担当します。

本を企画した背景や思い、ふだんは深く考えていないことを言語化してみようという試みです。果たして、ちゃんと書けているのか、不安ではありますが、少しでも読者の皆様の心にひっかかる言葉が捻り出されていたら、うれしいです。

一般読者がいない法律入門書を、どのように仕立てたら、ベストセラーとなるのか? という絶望からのスタート

そもそも法律書というのは、法学を研究している学者さん向けの専門書か、弁護士になるための参考書や問題集以外は、ほぼニーズがない領域です。ですから、法律をテーマに一般書として成立していくためには、発想の転換が必要でした。そこで、私が当初に企画したタイトルは以下でした。

●ヤバい法律相談室

なんか、どこかで、聞いたことがあるようなタイトルです。いや、正直、著者が100万登録を誇るYouTuberの岡野武志先生といえど、「売れる気配」は感じられません。その後、著者から提案があったタイトルが以下です。

●六法珍書

なかなか、面白いタイトルです。でも、まだアッパー層が読者という雰囲気で、サブカル書だったらいいのですが、そもそもビジネス書として売りたいというクロスメディアの社風からはほど遠いタイトルです。その後、六法珍書はたしかに良い企画だと思うが、もっと売れそうなタイトルは何か? という議論になった時、著者からまたアイデアが出てきました。

●どこでも六法

おしい。ただし、ドラ〇もんをパクっていることは明白で、著者が弁護士であることを考えると、リスキーすぎるタイトルです。とはいえ、悪くないタイトルでしたので、半年くらいは寝かせておきました。

そして、刊行が迫ってきた夏前にタイトルを決定しなければなりませんでした。まずは、本書のコンセプトに立ち戻ってみました。その時、こんなコピーが浮かんできました。

「こどもがおとなになるためのほうりつにゅうもん」

視聴者層は大半が「こども」だということを聞いていました。でも、クロスメディアはビジネス書版元ですので、そこに直接リーチできない。では、どうすればいいのか?

私が下した判断は「親子で読む」というコンセプトでした。あくまで、大人ターゲットでつくり、大人が安心して子どもに提供できる、法律エンターテインメントです。

想定としては、親が子どもに読まそうと思って購入したら、大人がはまってしまう、という構造です。

なぜ、そんなことを思いついたのかというと、マクロで世の中をとらえた時、「大人も子どももない世界」だと思ったからです。

もう少し突っ込んだ言い方をすると、この世界には「大人は存在していない」。つまり、大人だと認識している大人は、全然「大人になりきれていない大人なのではないか?」という仮説です。

ですから、ターゲットは以下の3つになりました。

・大人になりきれていない、厨二病を患っている「おとな」
・厨二病を患っている「こども」
・「おとな」になりたいと考えている「こども」

ここであえて「おとな」「こども」と使用したのは理由があります。「こども」は既に法律書として70万部を超える異例のヒット作となっていた『こども六法』から「こども」というものを定義してみました。

「こども」とは、まだ純粋に無邪気に生きている、夢と現実を行き来しているような子どもを「こども」と私は定義しました。

かたや「おとな」とは、大人になりきれず、子どもとも言えない中途半端な状態です。一般的には思春期が「おとな」ともいえますが、今はそれが30代、40代になっても「おとな」は存在しています。

大人になりきれない「おとな」のための処方箋

そこで、私が提案したタイトルが著者の考えとも合致し、以下のタイトルとなりました。

●おとな六法

著者と編集者は「これでイケる!」と思いましたが、社内の反応は「???」でした。これは当然の反応です。でも、次の帯コピーで私は十分本書の面白さを伝えきれていると確信していました。

「ゾンビを殺すのは犯罪になりますか?」

馬鹿げています。そもそも、そんな本です。このコピーを見て興味がない人は、「大人」なので手に取らないと考えました。社内の反応は分かれましたが、私が想定している「1億総厨二病化現象」が正しいとすれば、大きなセールスになりうる企画です。

発売後の大きな反響と、読者8歳の謎

おとな六法』は、9月発売時には初版2万5500部、発売後2週間で4万8000部というロケットスタートを切ることができました。

これで、私が想定していた仮説は、あながち間違っていないことが判明しましたが、クロスメディアに送られてくる「読者感想」は10代がほとんど。なかには「8歳」と書かれているものもあり、「これ、何かのイタズラだろ!」と思っていました。

しかし、10月14日のさいたま新都心での著者イベントで、驚愕の事実が判明しました。イベント当日、朝から人がごった返し、当初予定300~400人をはるかに超えていました。私がざっと見積もったかぎりでは1000人規模。最終的にコクーン側から発表されたのは1200人! という、驚きの人数でした。

会場に現れた「こども」は、ほとんどが小学生低学年以下で、3~4歳のこどもも、『おとな六法』を握りしめていたのには、さすがにビックリしました。

「ねえ、キミ、その本、読めないでしょ!」と心のなかで、ツッコミまくっていました。

クロスメディアに来ている「読者感想」は、たしかに8歳からのものだったのです!!

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