こんにちは。『今、ラジオ全盛期。』の編集を担当した小山です。
この本は、約4年前、私が入社して初めて提出した企画でした。中学生の頃からずっと聴いていたラジオ。聴き始めた当時は、誰も周りに聴いている人がおらず、面白さを共有できずにいました。ですが、時が経つにしたがって、だんだん「私もラジオ聴いてるよ」という人に出会うようになり、コロナ禍を契機に爆発的にラジオを聴いている人が増えていった感覚がありました。
さらにラジオを特集したメディアなども目にするようになりました。大好きなラジオが注目を集めるようになったのは、とても嬉しいことでした。一方で、私は少しだけ心のひっかかりを感じていました。
もちろん、短い記事のなかで、すべてを表現するのは難しいのはわかっているのですが、私が感じているラジオの魅力を言語化してくれている人はほとんどいないように思えたのです。
初めてラジオを聴いて、田舎の片隅にいる自分とラジオブースが、一本の糸ですっと繋がったように感じたこと。会ったこともないパーソナリティのことを、遠くに住んでいるかっこいい親戚のお兄さんのような親近感を覚えたこと。生放送中に予想外のことが起こって、「今、まさに、ここで、面白いことが起こっているんだ!!」と胸が熱くなったこと。
短い記事では難しくても、「本」という長い情報量を伝えることのできるメディアなら、ラジオの魅力を語り尽くせるかもしれない。そう思って、ラジオの本の企画を考えました。
では、誰にラジオの本を書いてもらうのか。色々とリサーチを進めるなかで、とある配信イベントで、ラジオ業界の方が「ラジオの事情に一番詳しいのは冨山さん」というようなニュアンスのことをお話されていたのを耳にしました。ちょうど冨山さんは、私が一番よく聴いているラジオ番組の立ち上げを担当されていたこともあり、私は冨山さんにお声がけすることにしたのです。冨山さんにも、本を書いていただくことを了承いただき、「やったー!ラジオの本がつくれる!!!」と肩をブンブン回して企画に臨んだことを覚えています。
気合が入りまくっていた一方で、振り返ってみると、本のつくり方をまったく理解していなかったのもあり、私が編集者として役に立てたことはほとんどなかったと思います。タイトルも私が考えたものではないですし、原稿にも大きく手を加えたり、役に立つアドバイスを言えた記憶はほとんどありません。
この本に関して、私が唯一できたのは『待つこと』だけだったと思います。最初のうちは、「原稿、どうですか?」というような、いかにも編集者らしい催促をしていたのですが、次第に、催促ばかりしているのも気まずくなって、しかし、お預かりしていた原稿がすばらしく、このまま世に出さないのはもったいない、という思いで、時折「この前のラジオ、すごく面白かったです」とか「あのイベント行きました」とか、催促ではないけれどいつか必ず出版はしたい、という”念”みたいなものを送り続けていました。
私の”念”が通じたのか、そうでないのかはわかりませんが、ちょうど、あの伝説の東京ドームイベントと55時間特番が終わった頃、冨山さんから「やっぱり、本出したいです」という連絡をいただきました。――出版するなら今しかない。そんな感覚になり、そこからは一気に本作りを進めていきました。
今、ラジオが盛り上がっているのは、何十年もかけて、じっくりとリスナーとの関係性を”耕し続けて”きたから。これが『今、ラジオ全盛期。』における、ひとつのアンサーです。「音声コンテンツブーム」や、「コロナ禍」、「ながら聴き需要」など、これまでのラジオ分析とは異なる、長年ラジオ番組づくりの最前線に携わってきた冨山さんだからこそ見えている景色だと感じました。
「関係性を”耕し続ける”」という視点は、ラジオの魅力を的確に言語化しているだけでなく、あらゆるコンテンツづくり、さらにはすべてのビジネスにも役に立つものではないかと思っています。ラジオが好きな人にも、そうでない人にも、この本が届けば嬉しいです。
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小山
「いつか必ず出版する!」という"念"を送り続けてきて良かったです!