相手を思うほど、どうしても「何かいいことを言わなきゃ」と身構えてしまう。
だけど、フィードバックの本質は「アドバイス」ではない。
素直に「感想」として伝え、それによって相手の力を引き出すためのものであるはずだ。

相手をコントロールしようとする意図を手放し、肩の力を抜いて「一緒にダンスを踊る」ように関わる。編集者として数々のヒット作を生み出してきた佐渡島庸平さんは、新刊『編集者のフィードバック』でも、そんな「いい加減(良い加減)」なフィードバックが大事だといいます。

今回は、5/18早朝に開催した「ごえむ読書会」での佐渡島さん(文中、佐渡島)と5AM代表・5時こーじさん(文中、こーじ)のお話を、ダイジェスト形式でお届けします。

 

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『宇宙兄弟』完結ディナーを企画中


こーじ:
 佐渡島さんは最近、どのような活動をされているんですか?

佐渡島: プライベートでは、娘が生まれた今年の1月に曲を作って、大体今年10曲くらい作っています。歌詞を書くのに1ヶ月以上かかるんですが、去年作った曲には全部AIでミュージックビデオを作っています。AIの学校で授業をする代わりに、生徒に課題としてMVを作ってもらって、勝ち残った人に賞金をあげるというコンペ形式でもやっていたりします。

あとは来週、『宇宙兄弟』が完結するので、著者の小山宙哉さんに手料理を振る舞う会を企画しています。

青山のレストラン「sio」の鳥羽シェフとコラボして、僕も厨房に入って作るんです。 そのために、料理のメニューを僕が大事だと思う『宇宙兄弟』のセリフにして、僕がそれをどう解釈したかを載せた「冊子」を作っています。例えば「どっちが楽しいかで決めなさい」というメニューや、「一番金ピカなことは何」というウニとトマトのジュレが乗ったホワイトアスパラガスの料理とか。

単に完結記念の手紙を渡すよりも、むちゃくちゃ余白があるフィードバックになるじゃないですか。小山さんの分のお皿も、この4年かけて揃えた宇宙と月をイメージしたものを用意しています。

こーじ: そこまで長期間かけて準備してくれること自体が、余白としての深いフィードバックになりますね。

AIの活用で見えた、文章の「強弱とリズム」

こーじ: 今回出版された本は、AIと協業して作られたそうですが、難しかった点や楽しかった点はありますか?

佐渡島: 僕は編集の仕事は「アイデアと感動」だと思っているので、AIを使う作業自体は、コラボメンバーの中で一番AIの使い方が上手い人にお願いしてライター代わりになってもらいました。上がってきた文章は一言も反論がないほど僕っぽい文体なんですが、少し問題もありました。

例えば、AIが書くと「静かにゆっくりと進んでいく」のように形容詞が多用されすぎたり、具体例の抽象度が高かったり、同じ例をしょっちゅう使ったりするんです。 そして何より、AIの文章は「強弱」がなくて「同じ味の感じ」が続いてしまう。コース料理で言えば、薄い出汁から入って胃を温めてからメインにいくような流れがない。部分部分は良くてずっと「サビ」が続いている状態なので、読んでいると結構しんどくなるんです。

だから出来上がった文章を読みながら、「どこをサビにして、どこを弱めるか」というリズムを作る手直しに想定以上に時間がかかりました。 一方で、AIで書いたことがわかるように、あえてAI特有の「最も純粋に」とか「覚悟の表明」といった少し過剰な言い回しを残したりもしています。

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作家は「手」より先に「目」が成長する

こーじ: 著書の中で、アドバイスではなく「感想」を伝えることの重要性が書かれていますが、このテーマにした背景は何でしょうか?

佐渡島: 作家が成長する時って、自分の「手」が成長するよりも先に「目」が成長するんですよ。つまり、他人の作品を見た時の「感想」が良くなっていく。料理人でも、自分で作れるようになる前に「この隠し味はこれだ」とわかるようになるのが先ですよね。

今回の本は、担当編集者の小山さんが「どうやったら著者へいい感想が言えるようになるのか」と悩んでいたのがきっかけでした。そこで、僕の思考をAIに学習させるために、オンラインサロンのイベントとして約20時間インタビューを重ね、それをAIに読み込ませて目次や文章を作っていったんです。普通の本の何倍も時間がかかっています。

早くアウトプット出して結果出そうっていう考え方もあるんだけど、僕自身は基本的にそのプロセスをどう楽しむかというスタンスも大切にしています。途中のプロセス自体が面白ければ、それも OK っていう形でずっと行動し続けるっていうふうにしてるなって。

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こーじ: 著書の中で、一番面白いところの1つが「感想の型」だと思うんですけど、これはもうずっと本ができる前から実践されているんですか?

佐渡島: そうですね、もうAIができるずっと前から、普段作家と打ち合わせをする時、作品の「要約」「印象」「マーケット」の順番で話すようにしています。一行で要約すると何? 三行で言ってみたら? と問いかけることで、作家自身が考えを整理できるようにフィードバックしているんです。

相手の「緩やかな承認欲求」に気づき、肩の力を抜く

こーじ: チームや部下へのフィードバックにも通じると思うのですが、この本にはタイトルからの想像とは違い、ビジネスパーソン向けの「1on1はこうすべき」というような具体的なTipsがあえて書かれていないように感じました。

佐渡島: そうなんです。「1on1の作法」みたいに型を決めてしまうと、相手の状況に合わせて「いい加減」に接しようという本質から外れてしまうので、あえて書きませんでした。

そもそも、人の行動って全部「緩やかな承認欲求の塊」だと思っています。子供が「うんち見て」と言ってくるのと同じで、大人になっても、SNSで高級時計や車のエンブレムを見切れるように写真を撮るように、「自分のすごさをわかってほしい」という欲求があるんです。

昔の僕は、「出会う作家を絶対ヒットさせるのが自分の役目だ」と意気込みすぎていました。でも実は、相手に必死にアドバイスしているようで、本当は「こんなに勉強している自分を認めてほしい」という自己正当化や承認欲求が隠れていたことに気づいたんです。 多くの人は「ヒットしたい」と言いながら、実はヒットした時のプレッシャーを受け入れる準備ができていなかったりします。だからこそ、まずは相手が望んでいる反応を返し、本当に深い関係性ができてから深い話をするように、いい意味で肩の力が抜けました。

キャッチボールではなく「一緒にダンスを踊る」コミュニケーション

こーじ: 相手への声かけというのは非常に難しいですよね。最近妻が、ランドセルを選んでいる子供に対して「これにしなさい」ではなく、「ピンクいっぱい選んでるね」と声をかけていて、すごくいいなとハッとしたことがありました。

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佐渡島: それは素晴らしい声かけですね。まさに相手の行動の「要約」と「印象」を伝えています。

コミュニケーションって、相手をコントロールしようという「意図」を持ってしまうとおかしくなるんです。「自分のため」なのに「相手を成長させるため」と言い訳をして相手を制御しようとすると、気持ちよく対話ができません。

だから、言葉を投げ合うキャッチボールではなく、「一緒にダンスを踊る」くらいの感覚がいいんです。相手の状況に合わせてステップを踏み、いい感じに噛み合うことを目指す。 本の中で「僕はあなたの可能性をあなた以上に信じてる」と書きましたが、これは「相手が諦めない限り、いくらでも打ち合わせするよ」と、常にドアが開いている状態を示す覚悟のことなんです。

〜参加者からのご質問〜

参加者Aさん: 父親が「今世では人とのつながりを諦めている」と言っている一方で、私は諦めないでほしい、父親を信じているという気持ちで関わっているのですが、これは私の自己満足の押し付けでしょうか?

佐渡島: まず、「つながり」や「信じる」という言葉が具体的に何を指しているのか、一緒にブレイクダウン(分解)してみてください。大抵の場合、大人が強い言葉を使っている時はただの「お気持ち表明」なんです。子供の「死んじゃえ」と同じで、ただ疲れていて言葉が尖っているだけかもしれない。それに気づくような指摘をうまくしてあげると、関係性は変わると思います。

参加者Bさん: 仕事で「ヒットしたい」と言いながら、行動が伴っていない人にはどう接すればいいですか?

佐渡島: 例えば「10億円欲しい」と言っているのに、何に使うのか決めていないのと同じです。本当に欲しいのは10億円ではなく「安心感」かもしれないですよね。言葉の表面だけを捉えるのではなく、その人が本当に求めているものは何なのか、逆算して観察することが大切です。

参加者Cさん: ライター講師をしているのですが、生徒への添削で、こちらが答えを言った方がいいのか、考えさせた方がいいのか迷います。

佐渡島: ライターの文章は「情報を伝える」ことが主目的であり、作家性よりも「型」が重要です。メディアごとに「強烈な引きから入って、要約、具体例」といった答え(型)が決まっているので、初心者の場合は「まずはこの型を覚えよう」と明確に伝えてあげるのが一番良いフィードバックだと思います。

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「良かれと思ったアドバイスが響かない」と悩むとき、自分のコントロール欲を手放せると良いかもしれません。

テクニックではなく「相手の可能性を本人以上に信じる」という覚悟で、あえて「いい加減」に関わりながら、相手の自走を支えること。まずは身近な人への「感想」を、肩の力を抜いて伝えてみることから始めてみませんか。

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