20代の過ごし方で、人生の解像度が決まる――。
出版不況と言われる現代において、ビジネス書分野でチャレンジを続けるクロスメディアグループ。その創業者・小早川幸一郎は、20歳の学生編集者からそのキャリアをスタートさせました。

「夕飯が出るから」という理由で飛び込んだ出版の世界。Windows 95の登場という時代の荒波。そして、若さゆえの過信から招いた「怒りのFAX30枚」の大失敗……。

本記事は、YouTube「真田茂人と学ぶリーダーシップ大学」への出演内容を特別に再構成。数々の泥臭い経験を経て行き着いた「ビジネス書の本質」と、若手ビジネスパーソンに贈るメッセージ「急がず、休まず(Haste not, Rest not)」の真意に迫ります。

創業社長が少ない出版業界で、「ビジネス書」に特化する強み

真田: 本日はよろしくお願いします。クロスメディア・パブリッシングはビジネス書の分野ですごく伸びていらっしゃいますが、改めてどんな会社なのか教えていただけますか?

小早川: 2005年に創業して、ちょうど満20周年になります。ただ、IT業界なら20年は老舗ですけど、出版業界ではまだまだ新参者ですね。

うちの特徴は大きく2つあります。一つは「ビジネス書一本」であること。 多くの出版社は規模が大きくなるとジャンルを広げるんですが、うちは広げません。その代わり、「ビジネス書」の定義を広げています。昔ながらの自己啓発やスキル系だけでなく、デザイン、アート、テクノロジー、ヘルスケアなど、今のビジネスパーソンが関心を持つテーマを掛け合わせて新しいジャンルを作っています。

 

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真田: なるほど、テーマの独自性が成長の理由なんですね。もう一つの特徴は?

小早川: 「創業者が社長であること」ですね。今の出版業界って、2代目・3代目の社長か、サラリーマン社長がほとんどで、創業者社長って意外と少ないんですよ。 僕自身が創業者なので、クライアントであるスタートアップや中小企業の社長の気持ちがわかります。だからこそ、経営者の方が「自分の気持ちがわかる編集者に本を作ってほしい」と相談に来てくれることが多いんです。

 

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Windows 95の衝撃と、学生編集者の誕生

真田: 今回のテーマは「あの人の20代はどうだった」なんですが、小早川さんのビジネス人生のスタートはどのようなものだったんでしょうか?

小早川: 僕は20歳で編集者になって、29歳の最後の日に独立したので、20代はずっと本を作っていました。
きっかけは大学時代のアルバイトです。当時はインターネットもなくてマスコミが人気でしたが、僕は特に編集者になりたかったわけじゃなくて、「夜ご飯(出前)が出るから」という理由で出版社で雑用のバイトを始めたんです。

真田: 食事が動機だったんですね(笑)。そこからどうやって編集者に?

小早川: バイトを始めた1995年頃、ちょうどWindows 95が出たんですよ。パソコン書の市場が一気にできたんですが、実績のない新しい分野なので、経験豊富なベテラン編集者である必要がなかったんです。
僕は当時、学生なのになぜかMacを持っていて、インターネットも繋いでいた。「小早川くん、パソコン使えるよね?」ということで、学生の身分ながら契約社員のような形で、パソコン書の編集を任されることになったんです。

真田: 学生でいきなり編集担当とは、すごい抜擢ですね。

小早川: 雑用は全然できなかったんですけどね(笑)。でも、企画を出すのは好きで、社員の人とご飯を食べながら「学生の間ではこういうのが流行ってますよ」なんて提案をしていました。それが評価されて、就活もせずにそのままその会社に入社することになりました。

 

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「怒りのFAXが30枚」──若き日の失敗と学び

真田: 20代で毎月本を出されていたそうですが、失敗談などはありますか?
小早川: たくさんありますよ。特に覚えているのは、20歳そこそこの駆け出しの頃、著者の原稿を勝手に書き直しちゃったことですね。「こんな原稿じゃダメだ」と思って、2徹ぐらいして全部リライトして送ったんです。

真田: それは……著者さんは怒りますよね。

小早川: 怒りのFAXが30枚ぐらい届きました(笑) 「これは僕の原稿じゃない!」って。上司からも「本は著者のものであって、編集者のものじゃない」と諭されて、また徹夜して元の原稿に戻しました。
内心、「こんな本、売れるわけない」と思ってふてくされていたんですが、出版してみたら5万部の大ヒットになったんです。

真田: 5万部はすごいですね! 自分の感覚が間違っていたと。

小早川: 東京ドーム満員分の人が買ったわけですからね。そこで「編集者の我(が)を出してはいけない、本は著者のものだ」と痛感しました。それ以来、原稿にはほとんど手を入れなくなりましたね。 若い頃は「なめられたくない」と肩に力が入っていましたが、編集の世界は数字が出るフェアな世界。実力があれば年齢は関係ないと気づいてからは、変なプライドよりも結果を出すことに集中できるようになりました。

「急がず、休まず」──20代でしか得られないもの

真田: 今の若い編集者や20代の方に伝えたいことはありますか?

小早川: 「失敗を恐れず挑戦してほしい」ですね。 今の20代は僕らの頃より賢いです。ノウハウや知識は簡単に手に入りますから。でも、知識は実践しないと「知恵」になりません。失敗は挑戦した証拠ですから、どんどんチャレンジして、それを知恵に変えていってほしい。

 

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真田: 最近はワークライフバランスも重視されますが、その点についてはどう思われますか?

小早川: 人それぞれの価値観ですが、「働きたい人が思いっきり働ける世の中」であってほしいとは思いますね。 あくまで僕の考えですが、20代の頃にガムシャラに働いた人は、50代になった時に人生が充実しているし、経済的にも豊かになっていることが多い。「アリとキリギリス」じゃないですけど、若い頃の苦労は買ってでもせよ、というのは一理あるなと実感しています。
真田: 最後に、小早川さんの座右の銘があれば教えてください。

小早川: 「Haste not, Rest not(急がず、休まず)」という言葉です。 先日、新渡戸稲造記念館でこの言葉を見て「これだ!」と思いました。
20代の頃、周りの編集者が外資系に転職したりしてキャリアアップしていく中で、僕はただひたすら目の前の本を作り続けていました。派手な転身はなかったけれど、休まず地道に続けてきた結果、今こうして充実した人生を送れています。
焦る必要はないけれど、止まってはいけない。これからキャリアを積む人にも、この言葉を贈りたいですね。

真田: 「急がず、休まず」。積み重ねることの大切さが伝わってきました。本日はありがとうございました!

 

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▼動画本編はこちらから
https://youtu.be/a2SFB2UlsDQ?si=ly4LIIKvwRHwx-Ws